FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

初当選

遠に続くように思われた挨拶まわりと演説会の日々はようやく終わり、投票日がやってきた。

開票の始まる事務所につくと、テレビがいたるところにおいてありその画面に次々に市町村ごとの速報が流れる。
開票速報が流れることに、椅子に座った支持者の方々一斉にどよめきがある。

「○○町では熊代さん四位に入ってる。これはいける!」という歓声もあがれば、
「○○町では、これっぽっちか。××市議は何やってんのや」という怒声もあがる。

父はホテルの別室で待機している。母は事務所の机にすわり、祈るように手を組んでいる。

有力な候補者の名前の横には、開票早々から次々に当確の印がうたれる。中選挙区の定員は五人だ。
一人、二人・・四人の名前の横に当選を示す赤いバラ印がついた。

時間が刻々と過ぎても、父の名前の横にはまだ印がつかない。テレビ画面は当選者のインタビューに切り替わっている。市町村での順位はもう画面ではとりあげられない。最後に見た画面では父は五位だった。逆転されてしまったのだろうか?


それでもついにその瞬間がやってきた。テレビの画面に「熊代昭彦 当確」というテロップが踊ったのだ。

万歳!というどよめきが一斉にわいた。これまでの苦労や疲れの分、喜びが爆発するような笑顔をはじける中、万歳三唱が始まった。


でも何かがおかしい。父の様子が変なのだ。

周りの方の一面の笑顔と歓声の中、父だけが困ったような顔でキョロキョロとしていた。
大きなバラの花束を渡され、一応「バンザイ!」のかけ声とともに両手は確かに万歳の格好で上がっているのだが、視線がまるで定まらない。

私にはわかった。


父は母を懸命に探していたのだ。


父と母はずっと二人三脚でやってきた。母なしで勝利を祝うなんて、父には考えられないことだったのだ。

しばらくして「奥さん!奥さん!」というひときわ大きな歓声と、地鳴りのような拍手が沸き起こった。

母が2階からようやく降りてきたのだ。目に涙を一杯にためて、大勢の人の波にもみくちゃにされながら懸命にこちらに向かって歩いてくる。手が、足が、全身が小刻みにふるえているのが遠目でもよくわかった。

母を隣に迎えて、ようやく父は満面の笑顔で万歳三唱をはじめた。

1993年7月20日。こうして父は「コウホシャ」から「代議士」になった。


2009-08-15 10:04 nice!(0) コメント(0) トラックバック(0)
スポンサーサイト
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。